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結論から先に書くと、ノーログVPN(匿名VPN)を正しく使っている場合は警察であってもインターネット利用者を特定することは困難です。警察でなくNSAになると話が少し変わってきますが、日本の警察であれば特定は難しいでしょう。
こう書くと『VPNを使っていても逮捕されている人がいるじゃないか』という反論もあるかと思います。確かにVPNを利用していても逮捕される人がいます。しかし、そういう人はそれなりの事情があるからです。
ノーログVPNを使うとインターネットで匿名化できる
あなたがこのWEBサイトに自宅からアクセスするとWEBサーバーのログにISP(インターネット・サービス・プロバイダー)のIPアドレスが記録されます。ISPというのは「OCN」だとか「ぷらら」だとか、そういったインターネットに接続する際に契約するプロバイダーのことです。
WEBサーバーのログにISPのIPアドレスが記録されている場合、手間とお金がかかりますが、正当な理由があればアクセスした本人の個人情報を手に入れることができます(やり方は後で解説します)。
一方、VPNを使ってWEBサイトにアクセスするとWEBサーバーのログにVPNサーバーのIPアドレスが記録されます。その場合、VPNサービス事業者に対して開示請求をする必要があるのですが、ノーログポリシーで運用しているVPNサービス事業者は開示請求に応じないか、仮に裁判になってもノーログポリシーだからログは存在しない、という回答で終わってしまいます。
ただし、多くのVPNサービスがノーログポリシーであると宣伝しているものの、ユーザーが期待するようなノーログポリシーで運営されているVPNサービス事業者は多くありません。
というのもログにも色々あり、どのログを保存するのかという点はVPNサービス事業者によって異なるからです。つまり、ノーログポリシーと聞くとすべてのログを保存しないように思えますが、保存するログもあるということです。
ユーザーが期待するノーログポリシーは個人を特定できるログを保存しないというポリシーですが、ノーログポリシーと偽っている場合やポリシーをよく読むと隅の方に小さく個人を特定できるログを保存する旨の記載があることがあります。
そのため、匿名性を高めるには信頼できるVPNサービス事業者を選ぶ必要があります。信頼できるVPNサービスを見極める方法としておすすめなのは、第三者機関によってノーログポリシーが検証されているVPNサービスを選ぶことです。
たとえば「NordVPN」「PIA」「ExpressVPN」の3つのVPNサービスはノーログポリシーを第三者機関によって検証されており、ノーログポリシー検証結果のレポートをユーザーに公開しています。そのためノーログVPNを選ぶ場合は基本的にこの3つVPNサービスから選ぶことをおすすめします。詳くはこちらの記事をご覧ください。

VPNの匿名性を更に向上させたければNordVPNのDouble VPNがおすすめです。

無料VPN(VPN Gate)には匿名性がない
VPNサービスにお金を使いたくないという方は無料のVPNサービスを利用することがあります。しかし、残念ながら無料のVPNサービスには匿名性は一切ありません。
日本の無料VPNサービスでよく知られているのが、筑波大学が提供するVPN Gateです。VPN Gateは学術的な研究を目的として実施されているオンラインサービスで、誰でも無料で利用できます。VPN Gateは世界中のボランティアによって構成されており今後有料化することもないでしょう。
VPN Gateでは最低でもログを3カ月間保存しており、次のような内容を記録しています。
- 記録日時
- 接続先 VPN サーバーの ID、IP アドレス、ホスト名
- アクションの種類 (接続または切断)
- 接続元 VPN クライアントの生の IP アドレス、ホスト名
- VPN プロトコルの種類 (SSL-VPN, L2TP, OpenVPN, SSTP のいずれか)
- 接続元 VPN クライアントのソフトウェア名、バージョン番号および ID (利用可能な場合)
- VPN 接続の確立中に通信したパケット数、バイト数、通信エラーが発生した場合のデバッグ情報
- VPN Gate セッションを用いた通信先の HTTP/HTTPS ホスト名 (FQDN), IP アドレス、ホスト名およびポート番号
これらのログはトラブルシューティングが不正利用者の接続禁止を目的に保存しているということですが、警察・検察などの捜査機関や裁判所などの司法機関から正当な理由を添えてログを開示するよう求められた場合は、裁判所令状の提出がなくても接続ログを請求者に対して開示します。
国外の捜査機関または司法機関に対しは、日本の外務大臣に対して ICPO 経由等で正式に要請をし、日本国の警察から要請があった場合にログが開示されます。
また、VPN Gateの中継サーバーではパケットログも保存しており、パケットログについてもサーバー管理者に対して要請があれば開示されます。
このように、VPN Gateを犯罪に利用した場合はハッキリと証拠が残るので、速やかに発信者を特定できるでしょう。
SNSで誹謗中傷した人はどのようにして特定されるのか
ここ最近はSNSでの誹謗中傷が問題になっており、民事だけでなく刑事事件にもなっています。SNSで誹謗中傷した人々が逮捕されるというニュースもときどき見聞きします。
それでは、彼らはどのようにして個人を特定されたのでしょうか?その流れを詳しく解説します。
2022年10月以降は個人の特定が迅速化された
SNSで誹謗中傷を受け投稿者を特定したい場合、SNS事業者に対して投稿者のIPアドレスを開示するように請求します。2022年10月以降は「発信者情報開示請求」と新設の「発信者情報開示命令」の2通りの方法で発信者を特定することができるようになっています。
従来の「発信者情報開示請求」はSNS事業者への開示請求とISPへの発信者情報開示請求を別々に進めていたのですが、新設の「発信者情報開示命令」はこれらが統合されて迅速に発信者の氏名や住所などが開示されます。
IPアドレスから個人が特定されるまでの流れ
今回は従来の「発信者情報開示請求」の場合を解説します。新設の「発信者情報開示命令」も手続きが一本化されるだけでやることは変わりません。
なるべく早くSNS事業者に対してIPアドレスの開示請求をおこなう必要があります。ただし、個人情報保護を理由に開示請求が拒否される可能性が高いです。
どっちにしても後で裁判になるので最初から弁護士に依頼した方が良いです。
もしもSNS事業者がIPアドレスの開示請求を拒否したら裁判所に発信者情報開示仮処分命令の申し立てをおこないます。
SNS事業者が不服申し立てをしてごねると時間がかかります。
ISPに対して発信者の氏名や住所などを開示するよう請求します。最初は任意開示請求になるかと思いますが、ISPが応じる可能性はほぼゼロです。
口頭弁論を経て結審し、請求が認容される判決が出れば2週間程度でISPから発信者の氏名や住所などが開示されます。
全体的にはこんな感じで進みます。
個人情報保護の壁は厚く、解決まで時間がかかる
まず最初にSNS事業者にIPアドレスの開示請求をおこないますが、通常は個人情報保護を理由に開示請求が拒否されます。
その場合は仕方がないので裁判所に発信者情報開示仮処分命令の申し立てをおこないます。発信者情報開示の理由が明確で正当性があれば、裁判所から仮処分決定が発令されるはずです。
SNS事業者が不服申し立てをしなければ、投稿者のIPアドレスを入手できるでしょう。
次にISPに対して発信者情報開示請求をします。任意開示請求の場合は強制力がないのでISPは応じないでしょう。そのため、裁判所に発信者情報開示請求訴訟を提起します。口頭弁論を2,3回経て結審し、請求が認容される判決が出れば2週間程度でISPから発信者の氏名や住所などが開示されます。
ちなみに、ISPに対してIPアドレスでなくタイムスタンプ(秒単位の投稿日時)と送信先IPアドレスを提示しなければいけません。送信先IPアドレスとはSNSサイトのIPアドレスです。
これで晴れて投稿者の個人情報を入手できたので、ようやくここから民事裁判などに移ります。長いですね。
ログ保存期間の壁
『なるべく早くSNS事業者に対してIPアドレスの開示請求をおこなう必要がある』と書いたのですが、それには理由があって、ISPは3カ月程度しかログを保存しないためです。長くても6カ月が限界です。
そのためISPがログを削除する前に発信者情報開示請求をしなけれなりません。今はISPに対して保全命令を出せるので、ISPに発信者情報開示請求訴訟をすれば裁判中にログを削除されることはないはずです。
問題は時間が経ってからSNS事業者に対してIPアドレスの開示請求をおこなったり、SNS事業者がごねてIPアドレスの入手が遅れた場合です。そうなると、その間にISPが通信履歴のログを削除してしまい個人の特定ができなくなります。
ノーログVPNを使っている場合は個人の特定が難しい
ノーログVPNを使っている場合、SNS事業者から入手できるIPアドレスはVPNサーバーのIPアドレスとなります。おそらく海外のサーバーでしょう。その場合、今度は海外の裁判所に対してIPアドレスの開示請求をしなければいけません。
その時点でかなり厳しいのですが、そのIPアドレスがノーログVPNのものである場合は絶望的です。
ただし、ノーログVPNと偽ってログを残しているVPNサービス事業者は多いので、そのようなVPNサービスを使っている場合は個人を特定できる可能性があります。しかし冒頭で紹介した「NordVPN」「PIA」「ExpressVPN」の場合は絶望的です。
この3つのVPNサービスはノーログポリシーを第三者機関によって実証している数少ないVPNサービス事業者です。サーバー構成やログの保存状況などの監査を受けてノーログポリシーを実証しており、その際のレポートもユーザー向けに公開しています。

そんなことを言っても、実際には裁判所命令があればIPアドレスは開示されるはずだ、という反論もあるでしょう。しかし、これらのVPNサービス事業者はサーバーを押収されても個人を特定できなかったり、裁判になっても顧問弁護士がノーログを主張しているという実績もあるVPNサービス事業者です。
そのようなVPNサービス事業者を相手に日本の弁護士や警察が太刀打ちできるか?というと難しいでしょう。
そのため、ノーログVPNを選ぶ場合は先に挙げた3つのVPNサービスを使うことをおすすめします。ノーログVPNに関する詳細はこちらの記事で詳しく解説しています。

ノーログVPNを使っていても個人を特定されるケース
VPNやTorを使っていても逮捕される人はいます。これにはいくつか理由があります。
行動パターンから特定される
過去に逮捕歴があり、言動に特徴のある方はVPNで匿名化していても「あいつだ」と警察に推測されます。その場合はすぐに目を付けられて監視対象となり、いずれ逮捕される運命となります。
監視カメラから特定
薬物の違法取引などで多いのですが、ネット上で匿名化していても取引現場などが監視カメラに写っていて、そこから監視カメラをリレーして自宅まで特定されるケースがあります。
ネットカフェや公共Wifiを使っていても監視カメラから特定されるケースがあります。
VPNを使わない通信から特定される
メールやSNSにVPN接続していない状態でログインしてしまい、そこから個人が特定されるケースがあります。これはシルクロード管理者が特定された理由のひとつです。また、ロシアのスパイがVPN接続するのを忘れてSNSにログインして身元を特定される失態を犯したこともあります。
マルウェアに感染
非合法なサイトにアクセスする際に匿名化は必須とも言えますが、そのようなサイトは既に司法機関によって抑えられている場合があります。そのようなサイトはマルウェアが仕込まれていることがあり、それが原因で個人が特定されます。これはダークウェブでよくある話です。
まとめ
SNSで誹謗中傷した人を特定する手順を解説しましたが、警察の場合は迅速にSNS事業者からIPアドレスを入手できます。しかし、この記事で解説したとおり「NordVPN」「PIA」「ExpressVPN」を相手にする場合は警察であっても個人を特定することは困難です。
不満を持たれる方も多いかと想いますが、これが現実です。
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